第7章 創業・経営革新・新連携

>1.中小企業新事業活動促進法

中小企業やこれから創業をしようとしている人々にとって、わかりやすい施策体系を実現するために、中小企業等が行う経営革新に対する支援策を定めた中小企業経営革新法」、創業への支援策を定めた中小企業創造活動促進法」および「新事業創出促進法」の3法律を整理統合するとともに、昨今の経済社会環境の変 化を踏まえた施策体系の骨太化を図り、中小企業が連携を通じて行う新たな事業活動(新連携)を支援することを目的にしている。

>2.中小企業新事業活動促進法の概要
中小企業の新たな事業活動を促進するため、①創業、②経営革新、③新連携の取り組みを支援するとともに、④これらの新たな事業活動の促進に資する事業環境基盤の充実を図るための措置が講じられる。


☆1. 創業・ベンチャー支援
>1.資金面の支援
優れたビジネスプランや有望な技術開発によって、融資、直接金融、信用補完、助成金などによる支援が行われている。

◎融資
(1)新創業融資制度
新たに開業する者の事業計画(ビジネスプラン)を審査して無担保・無保証人で融資を行う制度である。

次のa~cのいずれかに該当するものが対象である。
a.雇用(パート含む)創出を伴う事業を始める者
b.技術やサービス等に工夫を加え、多様なニーズに対応する事業を始めるもの
c.aまたはbのいずれかにより開業した者で、税務申告を2期終えていない者


※1上記以外でも、勤務経験等によって取扱が出来る場合がある
※2金融業、一部の風俗営業業種、一部の遊興娯楽事業等は対象とならない
※3開業前または開業後税務申告を終えていない者は、開業資金総額の1/3以上の自己資金が確認できることが必要である。

貸付期間:日本政策金融公庫(国民生活事業)、沖縄振興開発金融金庫
貸付限度額:1000万円
貸付期間:設備資金7年以内(据置期間6ヶ月以内)、運転資金5年以内(据置期間6ヶ月以内)
担保・保証条件:原則として無担保・無保証人
※法人の代表者が連帯保証人に加入する場合は、利率が0.1%低減される。

※沖縄振興開発金融公庫
沖縄県における産業の開発を促進するため、沖縄の国民大衆、住宅を必要とする者、農林漁業者、中小企業、病院その他の医療施設を開業する者、生活衛生関係の 営業者等に対する資金で、一般の金融機関が供給することを困難とするものを供給し、沖縄における経済の振興および社会の開発に資することを目的としてい る。

(2)女性・若者/シニア起業家支援資金
女性・若者および高齢者起業家の視点を活かした事業の促進を図ることを目的とした制度であり、日本政策金融公庫より融資が行われる。中小企業事業と国民事業とで内容が異なる。

①中小企業事業
対象
固定金利型:女性、若者(30歳未満)、高齢者(55歳以上)の方であって新規開業して概ね5年以内の者
成功払い型:女性、若者(30歳未満)、高齢者(55歳以上)の方であって新規開業して概ね5年以内の者のうち、技術・ノウハウ等に新規性が見られる事業において、設備投資を行う方のうち、一定の要件を満たす方

融資限度:共通(固定金利型、成功払い型)
直接貸し付け7億2000万円(うち運転資金2億5000万円)
代理貸付 1億2000万円(固定金利型のみ)

融資利率:
固定金利型:設備資金:2億7000万円まで特別金利、運転資金:基準金利
成功払い型:当初2年間 0.3%(3年目以降は成功度合いに応じた利率)

貸付期間:
固定金利型:設備資金:15年以内(うち据置2年以内)、運転資金:7年以内(うち据置1年以内)
成功払い型:7年(うち据置1年以内)


②国民生活事業
対象:女性または30歳未満か55歳以上の方であって、新たに事業を始める方や、事業開始後、概ね5年以内のもの
融資限度:7200万円(うち運転資金:4800万円)
融資利率:設備資金は特別利率、運転資金は基準利率
貸付期間:設備資金:15年以内(うち据置期間2年以内)、運転資金:5年以内(特に必要な場合は7年以内)(うち据置期間1年以内)


(3)再チャレンジ支援融資制度(再挑戦支援資金)
一旦事業に失敗したことにより したことにより、努力する意欲はあるものの困難な状況に直面している方の再チャレンジを支援する融資制度である。

対象:次のいずれの要件にも該当する方であり、かつ、新たに開業する方又は開業後概ね5年以内の方
a)廃業歴等を有する個人又は廃業歴等を有する経営者が営む法人であること。
b)廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等であること。
c)廃業の理由,事情がやむを得ないもの等であること。


中小企業事業
融資限度:設備資金: 7億2, 000万円 (うち運転資金: 2億5,000万円)
融資利率:
 固定金利型:融資利率
 成功払い型: :当初2年間0.3%. (以後、成功度合いによる利率)|
貸付期間:
 固定金利型:設備資金 15年以内 (うち据置3年以内)
         運転資金7年以内 (うち据置1年以内)
  成功払い型 : 7年(うち据置2年)


  
国民生活事業
*融資限度:2、000万円
*融資利率:
 ・固定金利型基準利率
 ・実績連動金利型:当初2年間0.3%、(3年目以降1.05-4.75%)
*貸付期間:
 ・固定金利型 :
  ・設備資金 15年以内 : (うち据置3年以内)
  ・運転資金5年以内  (特に必要な場合7年以内) (うち据置1年以内)
 ・実績連動金利型 : 7年(据置2年)


◎直接金融
(4)新事業開拓促進出資事業

a) ベンチャーファンド

民間のベンチャーキャピタルが業務執行組合員(無限責任組合員とな 合員)となって、 国内の成長初期段階(アーリーステージ)にある有望な中小企業等に投資事業を行う投資事業有限責任組合をつくり、中小企業基盤整備機構は、それに対して限責任組合員として出資を行う制度である。
 
中小企業基盤整備機構の出資額 :1組合につき出資総額の2分の1以内
中小企業基盤整備機構の出資期間:12年以内(3年を超えない範囲で延長可能)

図7-1 ベンチャーファンド
中小企業整備機構他  民間VC     
有限責任組合員         無限責任組合員

↑分配 ↓出資       ↑分配  ↓出資 ファンド運営(投資決定 他)      

         ベンチャーファンド       ←投資有価証券売却収入等←公開等 

育成支援(ハンズオン) ↓投資

         ベンチャー企業等
(中小企業庁ホームページより)


b)がんばれ!中小企業ファンド
新分野進出、新商品の開発など新事業展開にチャレンジしている中小企業であって、民間の事業会社等が運営するファンドから、事業に必要な資金調達や経営支援(ハ ンズオン支援)を受けることを希望する者を対象としている。
 目利き能力や販路ネットワークを有する民間の事業会社等が運営するファンドに対して、中小企業基盤整備機構が出資(ファンド総額の1/2以内)を行うことで、 新たな事業に挑戦する中小企業への投資機会の拡大を図っている。

図7-2 がんばれ!中小企業ファンド
中小企業整備機構他  民間事業会社   
有限責任組合員         無限責任組合員

↑分配 ↓出資       ↑分配  ↓出資 ファンド運営(投資決定 他)      

  がんばれ!中小企業ファンド ←新事業が成功した場合配当される←新事業展開
踏込んだ経営支援
(ハンズオン支援) ↓投資 資金供給

          中小企業等 
(中小企業庁ホームページより)


>2.経営面の支援
(1)創業·セミナー等の開催
①都道府県等中小企業支援センターによる創業セミナー
都道府県等中小企業支援センターにおいて、創業セミナーを実施し、創業に意欲を有する方を対象に、創業に向けた取組みに着手するにあたって必要な基礎的知識の修得を支援する。

②全国商工会連合会・日本商工会議所による創業塾・経営革新塾
全国商工会連合会・日本商工会議所が傘下の商工会、商工会議所などと連携を図りつつ、創業に向けて具体的なアクションを起こそうとする者を対象に、事業計画 (ビジネスプラン)の完成、創業に必要な実践能力の修得を支援するため、10日間 (30時間)程度の短期集中研修(創業塾)等を開催する。

[創業塾]
対象者:創業準備中の者や将来、創業を考える者で、やる気のある者。
費用:一人 5,000円程度(消費税込み)
講座内容:
創業・起業にあたっての心構え、ビジネスプラン作成のポイント、税務・法務など、創業に必要な実践的内容について、経営コンサルタント、中小企業診断士、創業体験者等が講義を行う。
開催地:全国約170カ所の 商工会議所·商工会等
開催日:平日夜または土日を中心に約20時間程度(地域により異なる)

[経営革新塾]
対象者:
現在、法人又は個人事業主として事業を営んでいる経営者、後継者で、新商品·・新技術等新事業展開を目指 す者、新市場開拓を目指す者、既存事業の底上げを目指す者など。 
費用:一人 5, 000円程度 (消費税込み)
講座内容:
経営革新の必要性とその進め方、経営革新成功事例研究、経営環境分析、事業戦略構築、経営革新のための戦略プラン作成など、経営革新に必要な実践的内容について、経営コンサルタント、中小企業診断士、専門家による講義・演習を行う。
開催地:全国約140カ所の商工会議所・商工会等
開催日:平日夜または土日を中心に約20時間程度(地域により異なる)


③中小企業基盤整備機構による創業支援研修の開催
全国9カ所の中小企業基盤整備機構(中小企業大学校)において、新規創業を意図する者を対象に1週間の研修を行い、創業に係る経営問題に必要な支援を行う。



(2)市場開拓
ベンチャー企業と投資家やビジネスパートナーとの出会いの場を提供するため、 革新的な事業に果敢に取り組むベンチャー企業が開発した製品やサービスを紹介する見本市等を開催する。

①ベンチャープラザ
ベンチャー企業とベンチャー企業を支援する投資家等が出会う「出会いの場」の 提供などを行い、ベンチャー企業が抱えている様々な課題の解決を支援するための イベントを、中小企業基盤整備機構が経済産業局ごとに開催する。

②ベンチャーフェア
中小企業基盤整備機構が行う日本最大級のベンチャーマッチングイベントである。 全国の選りすぐった中小企業・ベンチャー企業の製品、サービス等が紹介され、多くの事業者が見ることにより、販路・事業提携先の開拓などビジネスマッチングの機会が得られる。

p137

[ベンチャープラザ]
対象者:
独創的なビジネスプランを有しており、 投資家や事業パートナー等とのマッチングを希望している企業など。

支援内容:

資金調達や事業パートナー等を求める方々がビジネスプランを発表し、会場参加者(投資家、事業パートナー等)との質疑、意見交換を行うことができる。

[ベンチャーフェア]
対象者:
革新的な製品・試作品やサービスを有しており、販路・事業提携先の開拓を希望している企業など。

支援内容
a)出展ブース
ベンチャー企業は、販路・事業提携先等の開拓を目的として、開発した製品やサービスを展示できる。

b)セミナー
著名人による「基調講演」、起業や マーケティング等をテーマとした各種のセミナーに無料で参加できる。

c)アドバイスコーナー
公認会計士、中小企業診断士、技術士、経営コンサルタントなどの各種専門家により経営面、財務面、技術 面、マーケティング面等のアドバイスを無料で受けられる。


>3. その他の諸施策
(1)創業·ベンチャーフォーラム
少子・高齢化、医療・福祉、環境、資源・エネルギー、安全対策など、様々な課題への対応が求められている現在の日本経済における社会的課題の解決に取り組む企業や、既存の枠組みにとらわれず、新規性、革新性や独自性を備え、今後、 飛躍的な成長が期待される企業等を発掘し、表彰やモデル事例として情報発信 ることで、ビジネスモデルとしての価値を認め、新たな事業の創出・育成を促進していくことを目的としている。

これまで、創業・ベンチャーに対する国民の理解や創業機運を高める国民運動を柱に、「創業・ベンチャー国民フォーラム」として運営してきた内容を、その経緯と成果を踏まえた上で、2010年度より「創業・ベンチャーフォーラム」として、新たな事業の創出・育成を促進する取り組みへと発展している。

事業内容
調査事業 :
創業を取りまく経営環境の変化と、事業活動の実態を把握するための調査実施

表彰事業:
創業の促進、ベンチャー企業の輩出につながる優良事例の表彰を行う「Japan venture Awards」 ( JVA)を開催
この他に、コンテンツの構築、情報提供·発信事業などがある


(2) ドリームゲート事業(起業家輩出支援事業)
「起業家輩出支援事業(ドリームゲート事業)」は、財団法人ベンチャーエンタ ープライズセンターが主催し、経済産業省の後援を受けてDREAM GATE運営事務局が行う起業・独立支援サービスである。専門家によるインターネット無料相談などWebサイト等を活用した総合的な起業支援サービスを受けられる。


>4. 中小企業新事業促進法による総合的支援
(1)地域産業資源を活用した事業環境の整備
中小企業新規事業活動促進法では、支援体制の整備に意欲をもって取り組む都道府県等に対する支援を通じて、個人や企業が研究開発から事業家までの一貫した総合的支援を行うための体制を整え、新事業の創出をバックアップしている。

①地域プラットフォームの整備
都道府県は、各地域に存在する新事業支援機構(商工会議所、公設試験研究機関、TLO※等)を中核的支援機関として中心にネットワーク化することで、新たな事業活動を行う者に対して創業から事業化までの各段階において、必要な人材育成、技術開発、資金供給、マーケティング支援等の各種支援策をワンストップで提供する新事業支援体制(地域プラットフォーム)を整備できる。
※大学から生み出された技術(特許等)を企業等に橋渡しする機関のこと。

②高度技術産学連携地域の活用
都道府県等は、その区域内において、高度技術の研究開発等を行う事業者と大学その他の研究機関が集積し、相互に連携・交流することで新たな事業活動が促進される地域として、「高度技術産学連携地域」を設立できる。
※高度技術産学連携地域
都道府県等の区域のうち高度技術の研究開発等を行う企業が集積している地域

図7-3 新事業支援体制(地域プラットフォーム)の体系図
中小企業庁のホームページより


☆2. 経営革新の支援
中小企業が新たな事業活動を行うビジネスプランを策定し、その経営の向上を図る経営革新への取組を支援する。

>1. 経営革新の支援
(1)経営革新のための事業に対する支援
個別の中小企業者、組合および任意グループなどが、新商品の開発又は生産、新役務(サービス)の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入 、役務 (サービス)の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動等の経営革新 営革新計画 計画 を作成し、国または都道府県から「中小企業新事業活動促進法」にもとづくにもとづく経営革 新計画の承認を受け、経営の向上を図るための活動に対し支援が行われている。

(2)経営革新計画とは
 経営革新計画とは、事業者にとって次の各類型に該当する新たな取組みである。
①新商品の開発又は生産
②新役務(サービス)の開発又は提供
③商品の新たな生産又は販売の方式の導入
④役務(サービス)の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動
により、経営の相当程度の経営の向上を図ること。

※「新たな取組み」とは、個々の中小企業者等にとって「新たなもの」であれば, 既に他社において採用されている技術·方式を活用する場合でも対象となる。

※「経営の相当程度の経営の向上を図る」とは、経営目標として、経常利益、付加価値額または一人あたりの付加価値額の伸びを具体的に示す計画を作成することである。

(3)計画の作成主体(対象者)
①単独または複数の中小企業者
②単一または複数の組合
③その他(個人のグループなど)

(4)経営革新計画の承認者
都道府県知事または大臣(経済産業大臣及び事業所管大臣)

図表7-4 経営革新計画申請手続の方法
中小企業庁のホームページより

(5)計画期間
承認の対象となる経営革新計画の計画期間は3年間から5年間である。

(6)経営目標の指標
申請書の別紙に記載する経営の向上の程度を示す指標としては、「経常利益額 「付加価値額」または「一人当たりの付加価値額」を使用する。付加価値額の定義に ついては、営業利益、人件費及び減価償却費の合計とする。

①経常利益=営業利益-営業外費用
②付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費 一人当たりの付加価値額=付加価値額/従業員数


(7)経営目標
経営目標として、付加価値額又は従業員一人あたりの付加価値額が年率平均 3%以上伸び、かつ、経常利益が年率平均1%以上伸びる計画となっていること。

(8)経営革新計画の承認者に対する支援内容
①融資
中小企業者が「経営革新計画」にしたがって行う経営革新のための事業に必要な設備資金、長期運転資金に対して政府系金融機関が低利で融資を行う。

②信用保証の特例
経営革新のための事業を行うのに必要な資金への債務保証に関しては、普通保証、無担保保証、無担保無保証人保証のそれぞれについて、保証限度額の別枠化がある。

③税制(設備投資減税)
承認を受けた「経営革新計画」に従って経営革新事業を行う者に対して、その事業を行うため計画に従って取得等する機械及び装置について、取得価格の7%の税額控除又は30%の特別償却が認められる。

④特許料等の減免
「経営革新計画の承認を受けて技術開発に関する研究開発事業を行った場合には、その事業により生じた特許の審査請求料と第1~3年分の特許料について、1 /2の減免措置を講じる。

⑤中小企業総合展
経営革新に取り組んでいる中小企業等が自ら開発した新商品・新技術等を出展.・プレゼンテーション等により紹介する中小企業総合展を開催し、ビジネスマッチン グの場を提供する。

⑥販路開拓コーディネート事業
東京·大阪の中小企業·ベンチャー総合支援センターに配置された商社OB等の販路開拓の専門家が、経営革新計画承認企業などが開発した新商品等を、商社 ・企業などに紹介、または取り次ぎを行い、市場へのアプローチを支援する。


☆3. 新連携の支援
中小企業が異なる分野の事業者(中小企業、大企業、研究機関、NPO等) と有機的に連携し、それぞれの経営資源(技術,販路等)を有効に組み合わせて新事業活動を行うことにより、新市場創出を目指す取組(新連携)を支援している。

>1. 新連携事業
新連携(中小企業新事業活動促進法では、「異分野連携新事業分野開拓」)とは、 その行う事業の分野を異にする2社以上の異分野の中小企業者が有機的に連携し、その経営資源(設備、技術、個人の有する知識および技能その他の事業活動に活用される資源)を有効に組み合わせて、新事業活動を行うことにより、新たな事業分野の開拓を図ることを指す。

対象は、代表企業を含めて2社以上の異分野の中小企業者(他に組合、大学、研 究機関、大企業、NPOなどを含むことができる)で連携して、新たな事業活動に取り組む者である。

図表7-5「新連携」の定義
中小企業基盤整備機構のホームページ

(1)新連携事業の要件
新連携事業の計画内容は、異分野の事業者が経営資源を有効に組み合わせて、新事業を行うことにより、新たな事業分野の開拓を図るものである必要がある。
ただし、同分野で持ち寄る経営資源が異なれば異分野とされる場合がある。

◎「新事業活動」とは、次のように定義される。
①新商品の開発または生産
②新役務(サービス)の開発または提供
③商品の新たな生産または提供
④役務(サービス)の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動
ここでの「新たな」とは、地域や業種を勘案して新しい事業を指す。ただし、当該地域や業種において、既に相当程度普及している技術・方式の導入等および研究開発段階にとどまる事業については支援対象外となる。

◎「新事業分野開拓」とは、市場において事業を成功させることである。継続的に事業として成立することが求められる。
◎「計画期間」は3年から5年である。
◎財務面では、「新事業活動」により、持続的なキャッシュフローを確保し、10年以内に融資返済や投資回収が可能なものであり、資金調達コストも含め、一定の利益を上げることが必要である。

(2)連携体の条件
①中核となる中小企業が存在すること。
②2以上の中小企業が参加すること。他に、大企業や、大学、研究機関、NPO、組合などをメンバーに加えることも可能である。ただし、中小企業の貢献度合いが半数以下の場合は、支援対象外となる。
③参加事業者間での規約等により役割分担、責任体制等が明確化していること。


>2. 新連携支援地域戦略会議
地域の総力を上げて新連携の取り組みを支援するため、全国9ヶ所(北海道、東北、ラン等、中部、北陸、近畿、中国、四国、九州)の地域ブロックごとに新連携地域戦略会議が設置され、事業計画の策定段階から事業化にいたるまでの一貫した支援を行っている。
有望な案件については、金融や会計の専門家からなるチームを組成し、税務、法務等の専門的知見に基づく助言や製品を販売につなげるためのマッチング等、事業家に向けた支援が行われている。

図表7-6 新連携支援地域戦略会議
中小企業基盤整備機構 HPより

<具体的なサポート例>
*連携体の運営方法(規約作成、工程管理など)のアドバイス
*連携体に不足している連携先(大学、NPO、商社など)のマッチング
*ビジネスプラン作りにあたっての問題発掘、仮説の提供、検証
*ビジネスプラン実行にあたっての資金調達、特許契約の締結などの課題への対応
*より広い市場を目指した販路開拓の実現へのアドバイス

<支援担当者>
商社出身者、コンサルタント、金融機関出身者、ベンチャーファンド出身者など


>3. 新連携事業に対する支援措置
(1)新連携対策補助金

中小企業が技術·ノウハウの緊密な「摺り合わせ」を通じて、柔軟に「強み」を 相互補完しながら新規性の高い新製品·新サービスの開発等を創出する新たな連携 (新連携)を支援する。

事業化·市場化支援事業
対象 :
2社以上の異分野の複数の中小企業で連携して新たな事業活動に取り組む方で、中小企業新事業活動促進法第11条の異分野連携新事業分野 開拓計画の認定を受けた代表者(コア企業)

補助金額:
1認定事業計画あたり、上限2,500万円(下限100万円)
※技術開発を伴う場合、上限が3,000万円へ引き上げられる。

補助率 :経費の2/3


(2)新連携融資
「新連携計画」として認定を受けた事業に対し、計画に基づく設備資金および運 転資金について、計画の評価を加味し政府系金融機関が優遇金利で融資を行う。
 日本政策金融公庫の貸付限度額は下記の通りである。

(中小企業事業) 設備資金7億2,000万円、うち運転資金2億5,000万円
(国民生活事業),設備資金7,200万円、うち運転資金4,800万円


(3)新事業創出支援事業

全国の中小企業基盤整備機構において、「新連携」r農商工連携」「地域資源活用」などの新たな取組にチャレンジする中小企業者等の事業計画づくりから販路開拓まで、一貫してきめ細かなサポート支援を行う。

支援対象:
以下の3つの法律に基づく事業計画の認定をめざす中小企業者
・「中小企業新事業活動促進法」に基づく異分野連携新事業分野開拓計画。
・「中小企業地域資源活用促進法」に基づく地域産業資源活用事業計画。
・「農商工等連携促進法」に基づく農商工等連携事業計画。

支援内容:
全国の中小企業基盤整備機構に窓口を設置し、マーケティング等に精 通した専門家(※)が、事業段階に応じて以下のような支援を行う。
※製造業、商社、金融機関出身者、中小企業診断士など
 
①窓口相談 連携
②認定に向けた事業計画策定のアドバイス支援
③認定後の事業計画策定のフォローアップ
・市場調査、商品企画、試作品開発等のサポート支援
・首都圏等の販路開拓に向けたフォローアップ支援)
④各種の専門家の派遣

図表7-7新事業創出支援事業の支援の流れ
 (中小企業庁 ホームーページより引用)

(4)中小企業信用保険法の特例
認定を受けた中小企業者に、普通保険、無担保保険、無担保無保証保険 売掛金債権担保保険等に特別枠を設け、保証限度額の拡大等を行う。

(5)中小企業投資育成株式会社の特例
新連携に係る事業を行うために、資本の額が3億円を超える株式会社の設立に際 して、その株式を引き受けることにより資金調達を支援する。 また、中小企業者のうち、資本の額が3億円を超える株式会社が、新連携に係る 事業を行うために発行する株式、新株予約券、新株予約券付社債を引き受けること により資金調達を支援する。

(6) IPA (情報処理推進機構)債務保証

新連携プロジェクトの実施において、新技術を活用したプログラムの開発に必要 な資金について、「新連携計画」に参画する個別企業の返済能力、プロジェクトの 内容を評価し、無担保で債務保証が行われる。

*資金使途:次のいずれかを実現するプログラムの開発に必要な資金。
・品質、生産、信頼性等の向上
・互換性、移植性、操作性等の向上
・上記2つのほか情報処理における技術的課題の解決
・新たなハードウエア環境またはソフトウエア環境への対応
・新たな産業、商品、役務等の開拓、その他情報処理技術の利用の拡大 高度化
・以上のほか、これ等に準ずるもの

*保証融資限度額: 1件あたり1億5,000万円、1社あたり3億円
*保証料率 :年から0.75% (連帯保証人が2名以上の場合は年0.5%)
*保証期間 :5年以内
*保証額 :融資額の90%以内
*連帯保証人: 1名以上(ただし、取締役は全員)
*担保 :無担保


(7)高度化融資
「新連携計画」の認定を受けた任意グループが行う新商品の生産、 研究開発等に必 要な施設の整備に要する資金を、中小企業基盤整備機構から低利融資を受けられる。

貸付対象者:次の要件のいずれにも該当する任意グループ
・構成員が4人以上
・構成員の2/3以上が認定中小企業者

*貸付対象資金:土地、建物、構築物、設備
*貸付金利:無利子
*貸付期間 :20年以内(うち据置3年以内)
*貸付割合 :90%