第19章 経済変動
<本章の目的>
本章では、経済の活動水準の時間的な変動を対象として「景気循環論」と「経済成長論」についてみていく。
☆1.景気循環と経済成長
>1.景気循環
経済活動は、図表19-1のように景気循環を繰り返しな ら緩やかに拡大しkva このような経済活動の拡大を経済成長とよぶ。
>2. 経済成長率と寄与度分析
ある一定期間(通常1年間)における国民所得(国内総生産)の増加率のことを経済成長率という。
☆2.成長会計
>1.コブ=ダグラス型生産関数
しなければならず、これを資本の深化とよぶ。
<本章の目的>
本章では、経済の活動水準の時間的な変動を対象として「景気循環論」と「経済成長論」についてみていく。
☆1.景気循環と経済成長
>1.景気循環
資本主義経済の経済活動は、図表19-1のように時間を通じて上下変動をすることが実証されており、この変動を規則的な循環運動として捉えたものを景気循環とよぶ。
景気の山から山まで(または谷から谷まで)を一循環(一周期) とよび、景気 の山から経済活動が低下し始めた状態を後退、後退が進み谷に至るまでを不況、景気の谷から経済活動が上昇し始めた状態を回復、回復が進み山に至るまでを好況という。
景気循環の長さは周期の違いによって、図表19-2のように4つに分類され、それ
ぞれ循環が発生する原因が異なる。ただし、4つの景気循環は独立して存在してい
るわけではなく、大きな循環が小さな循環を内包するかたちで存在している。
経済活動は、図表19-1のように景気循環を繰り返しな ら緩やかに拡大しkva このような経済活動の拡大を経済成長とよぶ。
>2. 経済成長率と寄与度分析
ある一定期間(通常1年間)における国民所得(国内総生産)の増加率のことを経済成長率という。
たとえば、ある年の国内総生産額Y1が500兆円、翌年の国内総生産Y2が550兆円ならば、
経済成長率は、
となり、10% (=0.1) と求めることができる。
このような経済成長の要因を需要面に求めるのが寄与度分析である。第8章の45度線分析でみたように、国内総生産(国民所得)と消費をはじめとする各需要項目の間には次の式が成立する。
Y= C+ I+G+EX-IM
ここで、Yは国内総生産、Cは消費、Iは投資、Gは政府支出、EXは輸出、I Mは輸入を表す。
上式の変化分をとると、
⊿Y= ⊿C+ ⊿I+⊿G+⊿EX-⊿IM
両辺をYで割ると、
この式の右辺の各項は
各需要項目の成長率
に、
その需要項目額の対国民所得比
をかけたものである。
したがって各需要項目の成長率が大きくても、その需要項目の対国民所得比が小さければ 寄与度も比較 与度も比較的小さくなり、各需要項目の成長率が小さくても、その需要項目の対国民所得比が大きければ寄与度も比較的大きくなる。
☆2.成長会計
>1.コブ=ダグラス型生産関数
経済成長は生産活動によってもたらされ、生産活動は投入される労働量と生産設備などの資本量が増加するほど大きくなり、また、その経済の技術水準が高いほど生産活動は大きくなる。コブ=ダグラス型生産関数とは、技術水準および生産要素 (労働、資本) と生産量との関係を表す式である。
実質国民所得および生産量をY、技術水準をA、労働投入量をL、資本投入量をKすると、コブ=ダグラス型生産関数は次のように表される。なお、技術水準A を全要素生産性とよぶこともある。
Y=AKα乗L1ーα乗
ここで、αは0より大きく、1より小さい値(0<α<1)をとる。上式を変化率の式にすると、
と近似的に表される*1。
*1コブ=ダグラス型生産関数を対数に変形し、時間で微分することで変化率の式に直すことができる。 X"y» AK の両の両対数をとると、log Z = a logx-blog yとなる。
よって、コブ=ダグラス型生産関数Y=AKα乗L1ーα乗の両辺の対数をとると
logY= logA + a log K+ ( 1-a ) log L
となる。YやA、K、Lは時間とともに変化すると考えられるので、上式は時間の関数として
log Y( t)=logA ( t) + a logK( t) + ( 1-a)log L ( t)
と表される。
(対数関数の微分法則)、
また関数Z=f(Y)、Y= g (X)を合成したZ=f(g(X))をXで微分すると、
(チェーンルールまたは合成関数の法則)
となるから、上式を時間tで微分すると
となる。dY、dA、dK、dLは近似的に⊿Y、⊿A、⊿K、⊿Lと表されるので、上式は、
となる。
ここで、国民所得の変化率である⊿Y/Yは経済成長率を表す。
よって、経済成長は技術進歩率(全要素生産性成長率)⊿A/Aと資本投入成長率⊿L/L によってもたらされることがわかる。
このように産出と投入に関する式に基づいて総産出量の変化率と資本の投入量成長率との差としてとらえられる全要素生産性成長率を測定し、それによって長期的な経済成長の要因を分析しようとする方法を成長会計とよぶ。
このように産出と投入に関する式に基づいて総産出量の変化率と資本の投入量成長率との差としてとらえられる全要素生産性成長率を測定し、それによって長期的な経済成長の要因を分析しようとする方法を成長会計とよぶ。
>2. 一人あたりの国民所得と資本の深化
次に。一人あたりの国民所得 の成長要因について考える。
次に。一人あたりの国民所得 の成長要因について考える。
コブ=ダグラス型生産関数
と表すことができる*1。
ここで、K/Lは 資本労働比率または資本装備率とよばれ、労働1単位あたりの資本量を表す。
ここで、K/Lは 資本労働比率または資本装備率とよばれ、労働1単位あたりの資本量を表す。
上式を変化率の式に変形すると、
と近似的にあらわされ、
技術進歩率を不変(⊿A/A=0)とすると、
一人あたりの 国民所得上昇
のためには資本労働比率が上昇
しなければならず、これを資本の深化とよぶ。
*1